やっと宝箱にたどり着いた。
  これで『大いなる力』が、手に入る―――



ドロッチェ「―――え?」
 宝箱を開けたら、中から立ち上った黒い煙に包まれて、
  ・・・・・その後、私は何をしていた?
  どうして・・・スピン達が・・・ボロボロなんだ?

  私の目の前に、どうしてボロボロのみんなが―――?


 意識が消えた。
 次に視界が開けた時は、
 自分の投げた爆弾が、スピンを吹き飛ばしていた。

 意識が戻る
 今度はストロンがトリプルスターの星に殴りつけられる

 また戻る
 今度は吹っ飛んだUFOからドクが吹っ飛ぶ

 また戻る
 こちらに向かっていたスピンに星が命中する

 今度はストロン

 次はまたスピン

 そしてドク



  やめろ

  やめてくれ

  これ以上、みんなをっ―――!!



 そして、団員全員が同時に宙に飛ばされて。
 手は紛れもなく爆弾を放り投げた後で。



  私か?

  私なのか?


  みんなを傷つけているのは

  私、なのか―――?



  そんな

  そんな

  そんな―――




 まるで

 暗くて

 とてつもなく深い

 奈落に叩き落されたような


 そして、一筋だけ残った光も消えうせて。



 闇が体を包み込む

 そのまま光差さない漆黒の世界へ落ちていく―――




  「ドロッチェーーーっ!!」
 ダダダダダダダダ
 キキッ
カービィ「えっ、って、大丈夫!?」
 慌てて、一番近くのストロンに駆け寄るカービィ。
カービィ「ねえ、何があったの、ストロン!?」
ストロン「・・・・団長、が・・・・」
カービィ「ドロッチェがどうしたの!?」
ドク「ダ・・・ダークゼロとやらに、取り憑かれて・・・」
スピン「・・・・助けに行きたいのに・・・・動けない・・・・・・・団長ぅ・・・」
カービィ「どこに行ったの、ドロッチェは!?」
ストロン「・・・この方向・・・に・・・」
 腕を持ち上げてカービィの後ろの方角を指差す。
カービィ「分かった、僕がドロッチェを助けてくるから、休んでて!ワープスター!」
 シュン
 ビュンッ!!
 ワープスターに飛び乗って、ストロンが指差した方向に飛び去っていくカービィ。
スピン「カービィ・・・団長を、よろしくっ・・・!」
ストロン「スピン・・・・立てるか?俺達も、追いかける。」
スピン「うん・・・!」



カービィ「待てっ、ドロッチェ・・・じゃないっ、ダークゼロ!!」
 追いついた彼の背中に向かって叫ぶが、進む速度は変わらない。
 思いきってワープスターを加速させ、その背中に体当たりした。
 彼の・・・ダークドロッチェの動きが止まった
 かと思うと、ワープスターから跳ね飛ばされた。
カービィ「わ、ぶっ!」
 ボテッ
 地面に落下するカービィ。
 急いで起き上がると、空中にダークドロッチェが浮かんでいて、カービィを睨みすえていた。
カービィ「やる気だね・・・負けないよ、君には一度勝ったから!」




 ドカッ!!
 ドサッ
カービィ「痛っ!―――あーっ、カッターがっ」
 慌てて、外れてしまったコピー能力の能力星を追いかけるが、途中で消えてしまった。
カービィ「あああああっ!!」
 ガッ
 ボテッ
カービィ「痛っ」
 つまづいて転び、そこへダークドロッチェが接近する。
 トリプルスターを振り上げて、
カービィ「わっ!」
 カッ!
 そのまま転がってそれを回避するものの、
 形勢を立て直す事が出来ない。
 逃げる、逃げる、逃げ回る。逃げ場がある限り、そちらへ走る。
 そして、何を思ったか急停止して
カービィ「ドロッチェ!!」

  ・・・・・・

カービィ「このままでいいの!?」

  ・・・え?

カービィ「君がこのままだったらさ、スピンやストロンやドクはどうするのさ!?」

  ・・・何?

カービィ「みんながピンチだったら、君はどうするの!?」

  ・・・それは

カービィ「君がみんなを守らないと!!だって、」



  「君達ドロッチェ団って、仲間・・・家族なんでしょ!?」



  !



 暗くて深い奈落の底で

 身動きが取れなくて

 どう動けばいいのかも分からなくて

 ただうずくまっていた



 暗くて深い奈落の底に

 光が差し込んだ、気がした。



 ダークドロッチェの
 動きが、止まった。
カービィ「(今だっ!)」
 すかさず、大事に取っておいていたマキシムトマトで体力を回復させて、
 コピー能力を身に着ける。ドロッチェ戦にはいささか不利だと思って出さないでいた、『ソード』。

カービィ「ドロッチェ―――!!」
 ズバンッ!!




 薄く見える視界


 自分の手から滑り落ちた『トリプルスター』


 それをキャッチするカービィ


 自分の体から抜け出す黒い星


 空中を跳ねながらその黒い星が離れていく


 最後に、手に持った『トリプルスター』を一瞬こちらにかかげて見せ、黒い星を追いかけていくカービィ


 そしてまた、視界が闇に染まる。



 今度の闇は、ほんのりと暖かかった。






  スピン、ストロン、ドクッ・・・

  頼む、無事でいてくれ―――


ドロッチェ「・・・!」
 ガバッ
 傷ついた団員達の姿が見え、跳ね起きる。
 実際に視界に映ったのは、アジトの壁。
ドロッチェ「・・・え?」
  「団長ーっ!」
< ドロッチェ「わぷっ」
 いきなり横から黄色いネズミ+他大勢の小さいネズミに飛びつかれる。
ドロッチェ「ス、スピン?チューリン達?」
 問いかけた後、チューリン達の隙間からなんとか顔を出し、ぷはぁと息をつくドロッチェ。
  「これっ、ドロッチェの傷に響くじゃろう」
スピン「はぁーい・・・ぐずっ」
 わらわらと散らばるチューリン達。
 大多数は床に降り、数匹はベッドの上に残る。
 スピンはその場にぺたんと座り、サングラスを少し上げて目をこする。
ドク「具合はどうじゃ、ドロッチェ?」
ドロッチェ「・・・悪くは・・・ない。」
スピン「団長ぅ・・・何度もうなされてたから、心配して・・・」
ドロッチェ「何?」
ストロン「・・・何か・・・悪い夢、見ているようだった」


  ・・・・夢、か。


  よかった、夢で。


  「ドロッチェー」
全員「!」
 ぽてっぽてっぽてっ
ドロッチェ「カービィ!?」
カービィ「具合どうー?」
ストロン「・・・・それ以前に、どうしてここが?」
カービィ「ん、だってー」
 ブンッ
カービィ「これが教えてきたんだもん」
 振りかざしたそれはトリプルスター。
カービィ「ダークゼロを倒した後そのまま帰ろうとしたらさ、この星がここまで案内してきたんだよ。これ、なんかドロッチェのところに帰りたいみたいだから、返しにきたんだ。」
 気に入られてるんだねぇ、はい。と付け加えドロッチェに差し出す。
 それを多少力なく受け取ると、3つの星がドロッチェの周りを旋回し始めた。
 まるで、嬉しがっているようだ。
 くるりくるりと数回転、そして消えた。
カービィ「それじゃー、僕も帰るねぇ。別のおやつ探さないとー」
ドロッチェ「・・・・カービィ」
カービィ「?」
ドロッチェ「ケーキがどうとか言っていたが、どんなケーキだったんだ?」
カービィ「んむー。ふんわり甘いクリームと、真っ赤な甘いイチゴが乗ったショートケーキ!」
 問いかけられて、食べられなかった事がよほど悔しかったのか、頬を膨らましながらむっつりと、しかしキッパリと答える。
カービィ「それが何ー?」
ドロッチェ「いや、それだけだ。」
カービィ「じゃあ帰るね、バイバーイ♪」
 ぽてててててっ
 ・ ・ ・ ・ ・ ・
ドロッチェ「ドク」
ドク「わかっとる、今注文する。これでいいんじゃろ?」
ドロッチェ「・・・ありがとう。それと、スピン達は何がいい?料金は私が払う」
スピン「えっ、いいの?モンブランッ」
ストロン「・・・・・・ショコラ・・・・」
ドク「ほっほっほ、わしはチーズケーキにしておくかの。」
ドロッチェ「私の分はブルーベリーケーキで、頼む。」
ドク「了解じゃ。」
スピン「でもなんでいきなり?それにお金大丈夫?」
ドロッチェ「カービィにもみんなにも迷惑をかけたし、金なら今まで盗んだもので十分足りる。」


  つまり、せめてものおわび・・・罪滅ぼしさ。


スピン「そっかー・・・でも」
ストロン「俺達は・・・家族だから・・・・」
ドク「迷惑なんていつもの事じゃよ、ドロッチェ。家族ならなおさら、じゃ。」
ドロッチェ「・・・・家族・・・」




 しばらくして。
 カービィの元に、イチゴのショートケーキが届いた。
 ドロッチェ団から、迷惑をかけたおわびとして。
カービィ「そっかー、ドロッチェがケーキの事を聞いてきたのは、こういうことかぁ」
 さっそくフォークを用意。
カービィ「・・・ドロッチェー」
 フォークにさしたケーキを空にかかげ、
カービィ「仲間とか、家族とか・・・絶対、大事にねっ!」
 パクッ



―fin―




このつぶやき を元に作って下さりました…!
カービィ格好いい…!それぞれのらしさが出ていてニヤニヤしながら読ませてもらっていましたv(怪)

るるるさんありがとうございました!